院長のひとりごと コラムcolumn

ネット社会と睡眠
掲載日:2019/05/12

令和を迎えたこのゴールデンウィーク、10連休の方もいらっしゃったかと思いますが、皆さんいかが過ごされましたでしょうか。

電子カルテや検査会社など当院に関連する各メーカーさんが全てお休みになるとのことから当院も9連休を頂戴しました。これだけの休みはなかなかとれないことから折角のこの機会、中国は深センへと視察ツアーへ行ってまいりました。

赤いシリコンバレーと称する深センの街は香港に隣接し30年前は小さな漁村だったものが、今ではITや遺伝子など研究や教育、また様々なイノベーションなど先進的な街へと大きく変貌を遂げています(しかも途上にある!)。わずか3万人だった人口も1300万人へと膨れ上がり企業の高層ビルが立ち並んでいます。
今回、その中で睡眠医療の点から考えて非常に興味深い企業からのお話しがありましたのでご紹介したいと思います。

中国では現在キャッシュレス化が急速に進んでおり、現金お断りの店も多数出現、無人コンビニも試験運用が開始されました。つまりそれだけ中国の電気事情が安定していることを示しているのでしょう。そしてキャッシュレス化の最大要因は偽札対策にあるようです。
11月11日を中国では「独身の日」とやや皮肉を込めて呼んでおり、日本のニュースでも取り上げられるアリババというネット通販会社のイベントにて数十兆円に及ぶネット販売祭りのようなものがあります。その11月11日を創業日とするテンセントというゲーム配信を主な生業とする会社(日本では若者に人気のTikTokという15秒程の動画配信サイトが有名、その会社を参加に擁している)の講義内容より、IT企業のネット社会への興味深い考え方、とらえ方をお聞きしましたのでお伝えします。

テレビでもよく宣伝されるスマホゲームは既に大きなマーケットを占めており、従来の家庭用テレビゲームとの最大の違いはまず無料で行える点にあります。これにより企業はユーザーの数を増やしたいと考えると共に、「ユーザーの時間を奪いたいんだ!」と言っていました。これが成功したら次には課金制度を使ってユーザーのお金を奪いにかかるのだそうです(ここでいう「奪う」という表現は同時通訳の方の表現をそのまま引用しましたが、企業の虜になってもらうという意味での「奪う」と理解していただければよいかと思います。悪意があっての「奪う」ではない点にご留意ください)。

確かにほんの数年の間に我々の生活はスマホなしでは過ごせないほどに進化しており、朝起きたらLINEやFBのチェック、朝のニュースもスマホ、人によっては株価のチェック(この方は昼や晩にも)もするでしょう。天気予報を確認し、通勤時間はゲームや本を読むのもスマホやタブレットに。午前中の仕事を終えるとすぐにコミュニケーションツールの確認、どこで食事をしようかもスマホ検索、アプリを用いて割引サービスをチェック。食後に軽くネットサーフィンし午後の仕事へ。コーヒーブレイク時もスマホをチェック。仕事終わり、帰宅時は朝同様スマホからの情報やゲームで時間をつぶし、帰宅し夕食、入浴後の一息つく時間もスマホやPCでネットサーフィンやコミュニケーションツール、ゲームで自分の時間を過ごす…
と以上のように朝起きて寝るまで、つまり寝ているとき以外はネットツールに触れている時間のなんと長いことか。IT企業は寝ている時間帯の参入したいと考えているようで、確かに最近では睡眠時間を測定したり、いびきをチェックするもの。はては睡眠の質をみるアプリまで登場しています。万歩計やジョギングの距離や速度などの健康関連アプリも、もはや日常的で我々の生活は24時間ネット社会と密接に連動というべきか、もはや支配されていると言っても過言ではありません。まさに上記の如くIT会社に時間を奪われていることを話を伺ってしみじみ実感するのでした。
そしてIT企業にとって最後に奪いたいのはユーザーの「脳」とのこと。一見洗脳でもされるのではないかと恐ろしくも聞こえますが、これは24時間常にIT会社のコンテンツが気になる状況にいて欲しい、気になって常にアクセスして欲しい。といったことを意味するようです。

この目論見は大変順調に進んでいるように見受けられます。その理由として、当院の睡眠外来を受診される方の大半は現代社会のキーワードとなっている睡眠負債(慢性的な睡眠不足)を抱えており、その理由の中にはスマホやPCに時間を割いている場合が多く、就寝直前まで使用している割合が高いことから不眠や中途覚醒、寝不足による起床困難など睡眠への多大な影響を与えており、本来起きているべき日中に問題を馳せているのです。

こういった睡眠に対し影響を与える生活習慣を「睡眠衛生」と呼び、我々睡眠医療を行う医療者としてはこの睡眠衛生を悪くするネット依存は黙認することができない事態であり、患者さんは無呼吸を心配して受診されるものの、お話を伺うと多くの場合、睡眠衛生の問題をはらんでいます。その年齢層は幅広く、小学生から中年期にまで及びます。また、睡眠時無呼吸で治療を要する方でも睡眠衛生が悪いことから日中の眠気がなかなか改善しないケースもあるほどです。もちろん、これを改善することで日中の眠気や居眠りなどの問題が改善もしくは軽減するケースは多く、一方なかなか聞き入れてもらえない場合は残念ですが症状の改善には至りません。

皆さんは一日のうち、どれくらいスマホなどに時間を割いていますか? 知らず知らずのうちにIT企業に脳を奪われていませんか? そのような目で今一度ご自身のスマホとの付き合い方を見直してみてはいかがでしょう。